first impression



そのいち





なんてヤなやつなんだろうと思った。
それほど初対面の印象はサイアクだった。
なのに、今、おれは、そのサイアクなヤツの隣りにいる・・・







「友樹、今度の水曜日ってあいてる?」
親友の優が、懇願するような目でおれを見上げて言った。優が同居している三上先輩の帰りが遅くなるということで、オレん家で夕食を共にし、家まで送っていく途中のことだった。
優とは中学入学と同時に知り合った。全く正反対の性格なのに、急速に仲良くなっていった。
どこが気に入ったとかそういうのはわからないけれど、素直で優しくてかわいい優を放っておけなくて、あれこれ世話を焼いているうちに、いちばんの親友になってしまった。
一時期、この「好き」という感情がどういうものなのか悩んだこともあったけれど、今では弟みたいな感情だと確信できる。ほとんど家族同然だ。

そんじょそこいらのオンナよりかわいい優は、オンナにもモテるが、それ以上にオトコにモテる。
それらからガードするのはとても大変だけれど、それはおれの務めだと思っている。
だけど、優はおれに守られ頼ってばかりではない。結構しっかりしていて、男気があるやつだ。
だから、長続きしているのかも知れない。だいたい、なよっちいヤツなんて、おれは大嫌いなんだ!

「なんで?何かあんの?」
何かあるからおれに訴えているのに、わからないふりをした。たま〜に苛めたくなるんだよな。優って。
「あの・・・さ、先輩の友達からバーベキューに誘われたんだけど・・・」
「へぇ?三上先輩の?友達?」
「も、もちろんふたりじゃないよ?先輩も行くし、大学のお友達数人も一緒なんだけど・・・知らない人ばかりだし、友達呼んでいいって崎山さんが言ってくれたし・・・」
「崎山って言うんだ。優を誘ったふとどきなヤツは!」
つうか、先輩は何やってんだ?
おれは優の同居人で、高校の先輩であった三上先輩を思い浮かべた。
三上先輩は、優のお姉さんのはるかさんの彼氏だった。
そして優は、そんな先輩にホレていた。同性でありながら。
優の先輩を思う気持ちは真剣で、だからおれは何も言うことができなかった。
突然の事故で優の家族が亡くなって、先輩は何を思ったのか、優の家に住むようになった。優がその話を受けた時は、さすがのおれも反対した。
優が傷つくのが目に見えていたから。

しかし、おれの予想に反して、ふたりはいい関係を築いているようだ。もちろん優はまだ先輩のことを想っているし、おれのカンだと先輩も優のことを想っているはずだ。
死んでしまった交際相手の弟という立場以上の感情を秘めていると思っている。

事故から半年ばかり。
まだまだ心の傷は癒えていないはずだけれど、いつかはふたりがうまくいけばいいなあっていうのがおれの願いだ。

なのに、他人に優を誘われて、何で先輩は黙ってるんだ?
いくら自分も参加するからって、優に誘いをかけるその崎山っているヤロウの下心はみえみえじゃないか!
それとも、先輩が鈍感ニブチンなだけか?
それともまさか・・・優のことなんて何とも思っていないのか?
とにもかくにも、おれも参加しないわけにはいかない。
わけのわからないヤロウが、優にふれるなんて、おれがぜってー許さねえ!
「ヒマヒマ!すっげえヒマ!それに楽しそうじゃん?行く行く!」
ノリノリで返事をするおれを見て、優はほっとしたようだった。






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